日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク * 活動報告

追悼李玉善ハルモニ

<2006年11月17日大阪市大>

追悼

李玉善ハルモニ、重い荷物を降ろして安らかにお眠りください

2025年5月11日、李玉善ハルモニが亡くなられました。
享年98歳でした。

一昨年の6月、コロナ下で面会が制限されていたなか、どうしてもハルモニに会わなければならないという一心でナヌムの家を訪問しました。

私たちの顔を思い出せない様子のハルモニでしたが、「日本から来ました」というと日本語で「日本政府にまだ謝ってもらってない！」とおっしゃいました。

生涯をかけて訴え続けてこられた、日本政府による心からの謝罪はとうとう受け取れないままこの日を迎えたことが申し訳なく、悔しくてなりません。

貧しさのため15歳で養女に出され、さらに業者に売り飛ばされた末に男らに拉致され、中国で「慰安婦」生活を強いられたハルモニ。

軍人の要求に逆らったことでより過酷で想像を絶する暴力を受け続けた日々の記憶はハルモニの心身に深く刻まれました。

解放後、中国に置き去りにされ、故郷に帰るすべもなく結婚したものの、夫も亡くなり2000年にようやく故郷に帰国を果たされました。

しかし、両親は亡くなり、日本軍の「慰安婦」だった過去によって親族からは遠ざけられ、ナヌムの家で暮らすようになったハルモニ。

解放後、被害者でありながら罪びとのように蔑まれて生きなければならなかった、その苦悩は日本軍性暴力被害者の多くの女性が背負わされたものでした。

その後、ナヌムの家で生活をしながら請われれば国内外を問わずどこにでも出向いて被害証言を重ねられました。

日本にも度々訪れて、市民や若者らと交流し、卓越した話力と人柄で人々に「慰安婦」問題への理解を拡げました。

日本政府に対しては、歴史の事実を認め、謝罪と賠償をするよう正面から追及し、解決に動こうとしない韓国政府に対しても厳しい姿勢でした。

2006年、李玉善ハルモニたちは、韓国政府が未解決の「慰安婦」問題について日本政府に賠償を求めないのは憲法違反だとして憲法裁判所に憲法訴願審査請求を提出、2011年に韓国政府の対応は外交上の不作為であり、違憲との決定が下されました。

2013年にはナヌムの家ハルモニたちとともにソウル地裁に日本政府に対する損害賠償請求調停を起こし、2021年に国家による不法行為を最後の手段として自国で訴えた被害者の権利を優先して「主権免除」を認めない原告勝訴判決が確定しました。

さらに、2014年には朴裕河氏の著書の記述が「慰安婦」被害者の名誉を著しく傷つけるものだとして訴訟を起こしました。

名誉棄損は認められなかったものの、李玉善ハルモニは一貫して事実の捻じ曲げや被害者の尊厳を傷つける行為は誰であれ容認せず、闘う姿勢を明確にしてこられました。

とりわけ2015年の日韓合意については「日本に金をもらって私たちを売り飛ばした」と韓国政府を激しく批判しました。

合意発表から間もなく日本を訪れたハルモニからは笑顔が消え、私たちの姿をみるや、「アイゴー、大変なことになってしまった」と訴えられたハルモニの崩れ落ちそうな姿を忘れることができません。

どんな時も希望を失わず、日本政府の謝罪を求め続けたハルモニを絶望させたのは被害者を無視して発表された日韓両政府による「最終的かつ不可逆的解決」という名の一方的幕引きでした。

日韓合意から10年を迎えたいま、事態は何ら進展がないまま「慰安婦」問題は終わったことにされようとしています。

「私はまだ解放されていない、戦争はまだ続いている」と語ったハルモニ、その思いは私たちが引き継いでいきます。

日本政府が加害の歴史と戦争犯罪に向き合い、再び同じことが繰り返されないよう、すべての被害者が真の解放を迎えるその日まで声をあげ続けます。

ハルモニが願った世界こそ、今を生きる私たち、そして次世代にとって、平和で、当たり前に人権が守られる社会そのものだからです。

李玉善ハルモニ、
どうか重い荷物を降ろし、安らかにお眠りください。

2025年5月
　　　　　　　　　　　　　　日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク

<2006年11月全国同時企画in大阪主催の証言集会で>

2020年4月、イ・オクソンハルモニが出演されている映画「まわり道」の上映会を企画、ハルモニにも来ていただく予定でしたが、ちょうど新型コロナが流行り始めた頃で来日は中止になりました。
そのためオクソンハルモニはメッセージを送ってくださいました。
ハルモニの願いを込めた動画をご覧ください。

コロナのために上映会も中止になりました。
チラシはハルモニを紹介しているのでアップしたいと思います

2025年05月11日（日） No.231 (訃報)