韓国で水曜デモ1000回
韓国憲法裁判所の決定を受け

今こそ日本軍「慰安婦」問題の解決を!

ついに1000回を迎えた韓国水曜デモ
 12月14日、韓国ソウル日本大使館前。1992年より毎週行われてきた水曜デモはついに1000回を迎えました。雨の日も雪の日も、体調が悪くても、日本大使館前の狭い路地にハルモニたちは立ち続け、日本政府の謝罪と賠償、責任者処罰、そして自分たちが受けた被害を後世に受け継がれることを要求し続けました。
 初めて日本大使館前の街頭に立ったとき、まさか1000回も続けることになるとは思いもよらなかったに違いありません。
 1000回も!!!!!
 ハルモニたちの勇気と努力と忍耐に喝采を贈るととともに、高齢のハルモニたちに1000回もそれをさせてきた日本政府に怒りを覚え、日本政府の頑なな態度を結果的に許してきた私たちの責任を感じずにはおれません。

 韓国ではこの日、1000人以上もの人が集まり、「平和の碑」を除幕しました。
 「1000回目の水曜デモが行われた12月14日の明け方、平和の碑を立てるために、まだ闇が去らない日本大使館の前の平和路に立ちました。日本の新聞社記者たちがすでに陣を敷いて、平和の碑が立てられる現場に来て、取材に熱を上げていました。歩道のブロック何枚かを取り剥がして土をならしてその上に碑を据えるまで、およそ3時間かかりました。そして、まだ少女だったハルモニが、正面から日本大使館をまっすぐに見つめて座りました。何も話さずに硬く閉じた唇と、そっと、しかし強く、握り拳を握ったその姿が、どんな一言よりも強く虚空を切り裂き、胸を押し潰さんばかりにする、忘れることのできない瞬間でした。
 そして11時を過ぎて、多くの人々が……平和路へと足を運びました。舞台の前から少しずつ長くなり始めた列が、日本大使館を過ぎて道の最後まで続き、1000次水曜デモを一緒にしようとする人々でぎっしりと埋められました。」(韓国挺対協の尹美香代表のメールより)
 この日、俳優の権海孝さんが司会をし、多くの著名人や運動家、政治家、高校生が発言しました。そしてハルモニの若い頃の姿をかたどり、その後の人生の重みを影に落とした少女の像が除幕されると、大きな歓声が沸き起こりました。
 この少女の姿をした「平和の碑」は、この20年間闘い続けたハルモニたちの心です。「私たちは死なない」「200歳まで生きる」と言いながら、「病床では死にたくない、水曜日日本大使館前で死ぬよ」と言い斃れていったハルモニたちの魂がずっとここにいて、窓を閉ざしたままの日本大使館を見つめているようです。
 少女の隣には椅子が置かれています。この椅子に座れば、誰でもこの場で少女と一緒に、つまりハルモニの魂と一緒に「水曜デモ」をすることができます。
 もし、ハルモニたちの思いをかなえることが出来なかったら、この像はいつまでも永遠に日本大使館を見つめ抗議し続けることになります。いつまでも日本の戦争責任と戦時性暴力を告発し続け、永遠に日本軍「慰安婦」問題は終わらないのです。
 もちろんそれは私たちの本意ではありません。日本政府の真摯な対応を引き出し、真の解決を実現することができれば、「平和の碑」は告発のためではなく、日本も含めた世界中の人にとって真の意味での「平和の碑」になることでしょう。

日韓首脳会談での野田首相の傲慢を許すな
日本政府の誠意がなければ、ハルモニが亡くなるたびに第2第3の像が建てられる
 しかし現実の日本政府の対応は、ハルモニたちの心を踏みにじり逆なでています。
 これまで1000回ハルモニたちが声を上げても無視し続けてきた日本政府は、(生身の人間でなく)像が無言の抗議を行うと、逆ギレとも言える過剰な反応を示しました。
 12月14日までの間、日本政府は外交ルートを通じて碑の設置の中止を求めてきました。藤村官房長官は12月8日の記者会見で「望ましくない、日韓間の外交活動に否定的な影響を与えるべきではない」と述べ、執拗に韓国政府に平和の碑を設置させないよう働きかけています。(韓国政府にこの件に関する許認可権がないことを知っているのにもかかわらずです。合法的に設置された碑を、政治的配慮で撤去せよとは、なんと傲慢なものいいでしょう。)
 そして12月18日に京都で開催された日韓首脳会談で、韓国の李明博大統領は野田首相に対し、日本軍「慰安婦」問題の解決を強く求めました。野田首相が「経済、安保の順で話を進めたい」と切り出すと、李大統領は、「経済問題以前に、歴史の懸案である『慰安婦』問題について話さなければならない」と一蹴し、会談の多くは日本軍「慰安婦」問題に費やされました。
 「日本政府が認識を変えればただちに解決できる」
 「解決できなければ、両国間に大きな負担として残る」
 「生存する慰安婦ハルモニが80歳以上であり、数年たてば亡くなってしまう。生涯無念を抱いて生きてきた63名のハルモニが亡くなってしまえば、両国間に解決できなかった大きな課題として残ることになるだろう」
 李大統領の話は、全く正当なだけではなく、日本政府に配慮した控えめな表現ですらあります。しかし野田首相のこれに対する返答は、傲慢で、ハルモニたちの心に共感するものにとっては全く耐え難いものでした。
 「わが政府の法的立場はすでにご存じなので繰り返さない。人道主義的配慮で協力してきており、今後も人道主義的見地で考えていく」
 「平和の碑が建設されたことは残念なこと」
 「大統領に撤去を求める」
 李大統領もこれにはさすがに驚き苛立ったのか、「誠意ある措置がなければハルモニが亡くなるたびに第2第3の像が建てられるだろう」と返答しています。

 全く日本に住む者として、この野田首相の対応は腹が立つし、恥ずかしいばかりです。許せません。

 それにしても野田首相が言う「人道主義的配慮」「人道主義的見地」とは、いったい何のことでしょうか?
 12月7日、玄葉外相は2007年に解散した「女性のためのアジア平和国民基金(国民基金)」の再開は可能だとした上で、日本の外交官が被害者の話を聴くため、一人一人と接触していることを明らかにしています。
 これまで協力してきた「人道的配慮」が国民基金で、今後考えるべき「人道主義的見地」がそれの再開であるならば、これほど被害者をバカにする行為はありません。
 被害者が求めるのは「国家としての謝罪」です。国が国民から募金を集めて手渡すことではありません。お金の問題ではないのです。国民基金の欺瞞性がどれほど被害者の心を傷つけ、問題解決を長引かせているのか、その責任は誰にあるのか――少しは自覚して欲しいものです。既に失敗した国民基金を再開し、その一方で「平和の碑」の撤去を求め、教科書で「慰安婦」被害者のことを教えない状況を放置するのであれば、それは被害者の尊厳を傷つけ心の傷に再び塩を塗り込む行為に他なりません。

韓国憲法裁判所の決定を足がかりに
なんとしてでも真の解決を実現しよう!
 李明博大統領のいらだちには理由があります。
 10月19日の日韓首脳会談では、韓国中が日本軍「慰安婦」問題に触れるかどうか注目していたにもかかわらず、李大統領はこの問題を全く口にしませんでした。しかし外交レベルではこの問題を話し合っていました。9月24日の外相会談でも韓国の金外相が政府間協議を提案したにも関わらず、玄葉外相は「日韓基本条約で解決済み」との姿勢を変えませんでした。いつまでも頑なで交渉の土俵にさえ乗ろうとしない日本政府の態度に業を煮やしたのです。

 韓国政府が今、日本軍「慰安婦」問題の解決を求めているのは、もちろん韓国憲法裁判所の決定があるからです。
 8月30日、日本軍「慰安婦」被害者の賠償請求権に関し、韓国の憲法裁判所は画期的な決定を下しました。それは2006年に日本軍「慰安婦」被害者109名が憲法審判請求を起こしてから5年後の決定であり、決定が下りるまでの間に実に48名もの被害者が亡くなっています。その憲法裁判所の決定とは次のような内容でした。
1, 日韓両国に「慰安婦」被害者の請求権に関し、1965年に結ばれた日韓協定(日韓基本条約)第2条1項の「請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決された」との解釈に相違がある。
2, 協定第3条は《両国の間に解釈をめぐる紛争があるときは、まず外交上の経路を通じて解決を図る。解決できない場合は、両国と第3国の委員を加えた仲裁委員会を2か月以内に立ち上げ、その決定に服する》との取り決めがある。にもかかわらず具体的な措置を取らなかった韓国政府の外交不作為は憲法に違反する。
 「韓国政府の外交不作為が憲法違反」と司法に言われてしまえば、行政はこれに従わなければなりません。

 野田首相や玄葉外相言う「日韓基本条約で解決済み」論は完全に論拠を失っています。日本軍「慰安婦」問題そのものが日韓条約の協議事項に含まれていなかったからです。
 それが協議事項に含まれていないというのは周知の事実ではありましたが、それを歴史的事実として証明したのはハルモニたちの力です。
 韓国で2002年に日本軍「慰安婦」被害者と原爆被害者からなる100人の原告団が日韓請求権協定関連文書の公開を求める行政訴訟を起こし、その勝利を受けて2008年8月に日韓会談関連文書が公開されました。もちろんそこには日本軍「慰安婦」問題や在韓被爆者問題は含まれていませんでした。協議されていない以上、協定第3条が適用され、解決に向け真摯に話し合わなければなりません。もしそれを片方が拒否するならば第3国を含めた仲裁委員会に諮らなければなりません。これは日本・韓国双方が合意した条約の内容です。一部には韓国が条約を踏みにじろうという行為を働いているかのような主張がありますが、既に結ばれた条約を踏みにじり反故にしようとしているのは日本の方です。
 日韓基本条約に日本軍「慰安婦」問題が含まれていないのは「歴史的事実」であるにもかかわらず、日韓基本条約で解決済み」とし、「日韓関係全体に影響を及ぼさぬように」とは、あまりにも不誠実であるし、加害者意識が完全に欠如した、まるで過去の植民地主義者のような振る舞いです。
 韓国憲法裁判所の決定は、事実と条約の内容から導き出された当然の結論です。そしてそれは日本軍「慰安婦」被害者や在韓被爆者たちの長年の運動の成果でもあります。高齢で闘い続け、これまで亡くなられた多くの被害者の成果であるということを胸に刻み、日本に住む者の責任として、このような日本政府の対応を許してはおけません。

 韓国の憲法裁判所の決定を広め、一刻でも早く真の解決を実現させましょう!



12.18日韓首脳会談に対する声明

日本政府は日韓請求権協定に従って二国間協議に応じ、
日本軍「慰安婦」問題の解決を!

 京都で開催された日韓首脳会談で、李明博大統領が日本軍「慰安婦」問題の「優先的解決」を求めたことに対し、野田首相は「(日本の)法的立場はすでに決まっており決着済みだ」とした上で、ソウルの日本大使館前に建立された平和の碑の「撤去」を求めました。
 日本軍「慰安婦」問題の解決を心から願ってきた私たち日本の市民は、この野田首相の発言に失望を禁じ得ません。

■日本政府は、韓国政府が申し入れた二国間協議に応じるべき

 野田首相は「法的には決着済み」という従前の日本政府の主張を繰り返しました。この主張に自信を持っているならば、両国の間にある「解釈上の紛争」につき、日韓請求権協定第3条に定められた手続に従い、韓国政府が申し入れている二国間協議に堂々と応じるべきです。9月以降続けられている韓国政府の提案には返答すらせずに、平和の碑の撤去だけを求める日本政府の非礼な外交的態度こそが、日韓関係に悪影響を及ぼす最たる要因であることを政府は認識しなければなりません。

■「平和の碑」撤去要請は本末転倒

 ソウルの日本大使館前の「平和の碑」には以下のように刻まれています。
 「1992年1月8日、 日本軍「慰安婦」問題解決のための水曜デモが、ここ日本大使館前ではじまった。2011年12月14日、1000回を迎えるにあたり、その崇高な精神と歴史を引き継ぐため、ここに平和の碑を建立する」
 碑が建立された意味を意図的にねじまげ、碑が日韓間に問題を発生させているかのように情報操作する言動は、却って日本軍「慰安婦」問題に対し政府が後ろめたさを持っていることをさらけ出しています。「在外公館の尊厳を傷つける」などと、被害女性たちの尊厳を傷つけたまま被害回復措置を取っていない日本政府が言うべきことではありません。私たちは、日本の市民としてこのような政府の態度を本当に恥ずかしく思います。
 
■私たちは被害者が受けいれられる、日本政府の責任を明確にした解決策を求めます

野田首相は、「人道的立場から、これまでも様々な努力をしてきた。これからも人道的な見地から知恵を絞っていこう」と発言したとされます。「人道的立場」とは、罪を犯した側が使うべき言葉ではありません。自らの責任を認めないこのような言動は、問題解決を遠ざけるだけです。政府の責任をあいまいにしたままの謝罪と補償が、被害者に受け入れられるはずがありません。
今回はじめて日本軍「慰安婦」問題に触れた李明博大統領が、1時間の会談の40分を「慰安婦」問題に割いた意味を、日本政府は読み誤ってはなりません。「人道的立場から」ではなく、過去の戦争犯罪を「日本政府の責任」として受け止め、被害者の声に耳を傾け、被害者が受け入れられる解決策を早急に提示するよう再度強く求めます。

2011年12月21日
第1001回水曜デモの日に

日本軍「慰安婦」問題解決全国行動2010


韓国政府の二国間交渉要求に応じるよう求める意見を外務省に送りましょう!!

 本年8月30日、韓国の憲法裁判所は、韓国政府が日本軍「慰安婦」被害者の賠償請求権に関し具体的解決のために努力していないことは「被害者らの基本権を侵害する違憲行為である」との注目すべき決定を出しました。

 日本軍「慰安婦」被害者が日本国に対して有する賠償請求権が「日韓請求権協定」第2条第1項(「完全かつ最終的に解決」条項)によって消滅したのか否かに対する日韓両国間の解釈上の紛争を、同協定第3条が定めた手続(@まず外交上の経路を通じて解決する、Aそれができなかった場合には仲裁委員会をつくる)に沿って解決していない韓国政府の不作為が、違憲であると宣告したのです。

 これを受けて、韓国外交通商省は昨日(15日)、日本軍「慰安婦」被害者をはじめサハリン残留韓国人、原爆被害者らの請求権問題につき、政府間交渉の開催を公式に求めました。歓迎すべき誠実な対応です。にもかかわらず、日本政府は「日韓国交正常化交渉の中で解決済み」を繰り返しました。

 この日本政府の「解決済み」論が果たして真実なのか。これを明らかにするため、韓国の日本軍「慰安婦」被害者と支援団体、法律家らは2002年に「日韓請求権協定」関連文書の公開請求訴訟を起こし、2年後の2004年に勝訴、韓国政府は2005年に関連文書を全面公開し、日本軍「慰安婦」問題、サハリン残留韓国人問題、原爆被害者問題が日韓交渉の過程で請求権問題の対象として扱われなかったことを確認しました。

 一方、日本政府はこの間、「解決済み」ならば関連資料を韓国にならって全面公開するべきだとする市民の要求に対して、誠実な対応をしてきませんでした。

 日本政府は根拠を示さないまま「二国間条約で解決済み」を繰り返すのではなく、被害者たちの半世紀以上の苦しみにしっかりと目を向け、その20年間のたたかいに真摯に応えるため、韓国政府の申し入れに誠実に応じるよう求める意見を外務省に送ってください。日本政府が、過去に対する責任を果たし未来世代に負の遺産を残さないための最後のチャンスを逃すことがないよう、皆様の積極的な行動を呼びかけます。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

以下の外務省HPから意見を送ることができます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/comment/index.html

北東アジア課 FAX 03-5501-8257


他にも、様々な方法で政府に意見を伝えてください。
様々な団体、個人が今こそ意見を、声を挙げてください。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

日本軍「慰安婦」問題解決全国行動2010